先日紹介してもらった本、久しぶりに本を読んで涙が出た。
実は「本」といってもそのほとんどが4コマ風の「まんが」なのだが、
人として生きることが切なくも嬉しくなる、
そんな一冊なのだ。
タイトルは、『ペコロスの母に会いに行く』
舞台は長崎。
主人公は認知症を患った89歳の母「みつえさん」
そして、その日常を独特なタッチで描くのが、
漫画家である62歳の息子「ゆういち」、通称「ペコロス」
なぜ「ペコロス(小タマネギ)」なのか?
それは読んでのお楽しみにしていただくとして・・・
やさしい解釈力
こんな一節がある。
文中の長崎弁が、またあたたかい。
<母の目の青い小箱>
緑内障の症状がある母の右目の瞳孔には
青い小箱がある
「おー ゆういちよー
こん中(小箱)には、今まで見てきたもんが全部入っとるよー
だけん もう、何もかんも忘れてしもて良かろー?」
「良かさ!生きてさえおれば、何ば忘れても良かさ!」
著者:岡野雄一
価格:1,296円(税込、送料込)
おそらく、話してはいないだろう。みつえさんが実際にこう作者に話したかどうかはわからない。
ただ、それまでの母の生き方や人柄から、そう言っているように感じたのではないだろうか。
記憶を失っていくことは、本人にとっても家族にとっても辛いこと。
自分の名前を叔父にされたり祖父にされたりしながらも、
それを、悲観するのではなく「何ば忘れても良かさ!」と作者は言う。
これほどやさしい解釈があるだろうか?
そんな中でも、一筋のひかりのようなやさしい解釈が、
厳しい状況を生きる上での心の支えとなるのではないだろうか。
解釈は、相手のためでもあり、自分のためでもあるのだ。